無くなっちゃったら採りに行けばいいって事が解ったからみんなでベニオウの実を食べようって事になったんだけど、錬金術ギルドにお客さんが来るかもしれないでしょ?
だからペソラさんはここにいないとダメだよね?
「ペソラさん。李オルフさんが男の人たちを呼んでベニオウの実を裏口から運んでくれたんだけど、何処にあるか解る?」
「えっと、多分調理場だと思うけど……どうして?」
「だってペソラさん、ここにいなくちゃダメでしょ? だから、ベニオウの実を持って来ようって思ったんだ」
ペソラさんが行けないんだったらここに持ってくるしかないもん。
だから僕が持ってきてあげようって思ったんだ。
でもね、そんな僕にペソラさんが、そんな事しなくてもいいよって笑ったんだ。
「ああ、それなら大丈夫ですよ。私がいなくてもギルドマスターとロルフさんがいますから」
「でも二人とも、あんなに一生懸命お話してるよ? 誰か来ても気が付かないんじゃないかなぁ?」
「あら、大丈夫よ。ここにくるお客さんにとってはいつもの事ですもの。用事があれば声をかけてくれるし、ロルフさんはともかく、ギルドマスターは誰かから声をかけられても気が付かないなんて事は無いから大丈夫」
ロルフさんとバーリマンさんがギルドのカウンターの所でずっとお話してるでしょ?
でもそれはいつもの事だし、ここに来るお客さんはちゃんと解ってるから、何かご用事があった時は気付いてくれるバーリマンさんにちゃんと話しかけるそうなんだ。
それにね、この錬金術ギルドの入口のドアには魔道具が付いてて、悪もんが入ってきて売ってるものを外に持ってっちゃおうとしたら絶対あかないようになってるんだって。
だからここはあの二人に任せておけばいいよってペソラさんが言うんだよ。
と言うわけで僕たちは、ベニオウの実が置かれてるって言う、調理場へ移動したんだ。
調理場に行くと、ほんとにベニオウの実が入った箱が積んであったんだよね。
でね、ペソラさんがそのうちのひと箱をテーブルの上に持ってきて蓋を開けると、調理場中に甘いにおいが広がったんだ。
「へぇ、これがベニオウの実ですか。おいしそうな果物ですね。それにとってもいい香り」
普通のベニオウの実をあんまり見た事が無いからなのか、ペソラさんは持ってきた実を見ても他の人みたいにびっくりしなかったんだよね。
と言う事は、ベニオウの実がとっても柔らかいって事も知らないって事だよね。
そう思った僕は、ペソラさんに教えてあげる事にしたんだ。
「これね、普通のより柔らかいんだよ。だから気を付けないと、持った時に皮がやぶれて手がべとべとになっちゃうんだ」
「そうなの? じゃあ、そ〜っと持たないとダメね」
ペソラさんはそう言うと干し草の中に手を入れて、真っ赤な実を下からすくうように持ち上げたんだ。
「これは……確かにちょっと力を入れただけで、簡単に破れてしまいそうね」
「うん。さっきも冒険者ギルドで、ルルモアさんが手をべとべとにしちゃたんだよ」
僕はね、冒険者ギルドであったことをに教えてあげたんだよ?
そしたらそれを聞いたペソラさんは、そのまんま食べるだけじゃなくって別の食べ方をしてもいいかもしれないねって。
「そんなに柔らかくて果汁が多いのなら絞ってジュースにしてもいいかもね。それに今の時期ならそのジュースを凍らせて甘氷を作ってもおいしいんじゃないかしら?」
「甘氷!? そっか、このベニオウの実はとっても甘いもん。甘氷にしたら絶対おいしいよ!」
それを聞いて大騒ぎしだしたのがキャリーナ姉ちゃん。
そう言えばお姉ちゃん、クラウンコッコのバーベキューの時も甘氷を作ってって言ってたよね?
「キャリーナ姉ちゃん、甘氷好きなの?」
「うん! 冷たくておいしいもん。ルディーンが作るお菓子も好きだけど、甘氷も大好き」
そっか。じゃあ、とっても甘いベニオウの実で甘氷を作ったらすっごく喜ぶだろうな。
でも、甘氷って作るのにすっごく時間がかかるんだよね。
「キャリーナちゃん。期待を持たせてしまって悪いんだけど、氷を作るのにはかなり時間がかかっちゃうのよ。だから今日はちょっと無理なんじゃないかなぁ?」
「そっか。そう言えばルディーンもすぐには作れないって言ってたっけ……」
それはペソラさんも解ってたみたいで、キャリーナ姉ちゃんにごめんねしたんだ。
それにキャリーナ姉ちゃんも前に僕が言った事を覚えてたみたいで、すぐに作れないって事を思い出したみたい。
でもね、よっぽど食べたかったのか、しょんぼりしちゃったんだよね。
「そんな顔しないで。このベニオウの実はそのままでも美味しいんでしょ? 今切り分けるから、一緒に食べましょ」
「うん……」
だからペソラさんも、一緒にベニオウの実を食べよってキャリーナ姉ちゃんに言ったんだけど、姉ちゃんはやっぱりしょんぼりしたまんまなんだ。
キャリーナ姉ちゃん、ペソラさんの話を聞いてすっごく食べたいって思ったんじゃないかな?
そんなお姉ちゃんの顔を見た僕は、何とか作れないかなぁ? って思ったんだよね。
「う〜ん。甘氷は無理だけど、つべたいお菓子なら何とかならないかなぁ?」
「えっ、ルディーン。冷たいお菓子、作れるの!?」
だからつい口から出ちゃったんだけど、そしたらキャリーナ姉ちゃんが目をキラキラさせて作れる? って僕に聞いてきたんだ。
そしたら、やっぱり無理だよなんて言えないでしょ?
「ちょっと待ってね。持ってるので何か作れないか、考えてみるから」
「やった! 頑張ってね、ルディーン」
僕がなんかできないか考えるよって言ったら、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんはもう大丈夫だって思ったみたい。
両手を上げて大喜びしながら、僕に頑張ってねって言ってくれたんだ。
「つべたいお菓子をすぐに作ろうと思ったら、魔石もちょっとおっきなのを使わないとダメだよね?」
時間をかけていいんだったら、あんまりおっきな魔石はいらないんだよ?
でも今回はすぐに作りたいから、ちょっと多めの魔力が出せる魔石がいるんだよね。
「今持ってるので一番おっきいのはこれだから、クラウンコッコの魔石を使おっと」
僕のポシェットにはちっちゃな革袋がいつも入ってて、その中にはいろんな大きさの魔石が入れてあるんだ。
何でかって言うと、ちょっと前からもうすぐ12レベルになれるなぁって思ってたからなんだ。
賢者や神官、それに魔法使いみたいな魔導士系のジョブはね、12レベルになると触媒魔法っていうものが使えるようになるんだよ。
この触媒魔法ってのはドラゴン&マジック・オンラインだと宝石や希少金属、それに魔力を含んだアイテムなんかを触媒にして発動する魔法なんだけど、どうやらこの世界だと魔石でも使えるみたいなんだ。
何でそんな事、まだ12レベルになったばっかりの僕が何で知ってたのかって言うと、それは一般魔法の中にも触媒魔法があったから。
と言うかこの触媒を使う一般魔法、今までも何度か使ってるんだよね。
僕がお砂糖やお塩を作る時に使う創造魔法ってのがあるでしょ? 実はあれも触媒魔法の一種なんだ。
あれって魔石を消費して他のものを創造する魔法でしょ?
魔導士のジョブが12レベルから使えるようになるそれぞれの固有魔法もあれと同じで、魔石の力を消費する事で自分の力だけじゃどうにもできないようなすごい魔法を使えるようになるんだよね。
まぁそうは言っても、12レベルになってすぐに使えるのなんてそんなにすごくないんだけどね。
「これを氷の魔石にしてっと」
僕は取り出したクラウンコッコの魔石を氷の魔石に変えると、それをどう使おっかなぁ? って考えたんだよね。
「う〜ん。アイスクリームの時みたいに入れ物が冷えるようにすると、その外っ側も作んないとダメだしなぁ」
あのやり方だったら甘氷と違ってすぐに冷たくなるんだよ?
でも入れ物を冷たくすると、それを持った時に中のものと一緒で持ってる手も凍っちゃうから、その外っ側にもう一個入れ物を作んないんとダメなんだよね。
だけどそんなのを作ってたら材料もいっぱいいるし、それにすっごくおっきくなっちゃうでしょ?
だから今回は別の形にしないとダメなんだよね。
「どうしよっかなぁ? あっ、そうだ! 入れ物がダメなら、かき混ぜる方をつべたくすればいいじゃないか!」
かき混ぜる棒の方がつべたくなるんだったら持つとこだけを工夫すればいいだけだもん。
それにこれなら、材料を入れる入れ物は何でもいいでしょ?
絶対この方が便利だよね。
だけど……。
「棒をつ下手くするだけだったら、もっとちっちゃい魔石でもよかったなぁ」
最初に作っちゃった氷の魔石を見て、僕は魔道具の方を先の考えときゃよかったなぁって思ったんだ。
本編に出てくる甘氷と言うお菓子ですが、これは果汁などの甘い液体を凍らせたアイスキャンディーのようなお菓子です。
ルディーン君がアイスクリームやかき氷を作ったおかげでグランリルではいろいろな冷たいお菓子がありますが、この世界全体では暑い時期の冷たいお菓子と言うと、ほとんどの人がこれを思い浮かべるくらいメジャーな食べ物だったりします。
まぁこれも魔道具が無いと作れないので、貧乏人には食べられないお菓子なんですけどね。
さて、先延ばしになっていた12レベルで覚える魔法ですが、変なところで情報解禁ですw
因みに触媒を使うとどんな魔法が使えるようになるのかは今までにも何度か出ているので、読者様の中にはもう解っている人もいる事でしょう。
でもこの魔法、ほんとに本編で使う機会が来るのだろうか? 少なくとも、ルディーン君の家族やその周りの人に使う事だけは絶対ないだろうなぁ。